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2008.04.13

ワープする宇宙―5次元時空の謎を解く

R






0.リサ・ランドール(Lisa Randall)

どこかの物理学者が著者のことを「物理も知らない数学者だ」と言っていた。
なので、てっきり、数学者が理論物理学へ転向したのかと思っていた。
この本の最初の方で、著者の物理理論の研究に対する態度がわかる。
自分を理論物理学者だと紹介している。
どの業界でも妬みとかあるからなあ。

物理現象を考察し、既知の理論と整合性をとりながら、新しい理論を構築する方法を「ボトムアップアプローチ」と呼んでいる。
これに対し理想的(イデア的)な全世界を記述できる新しい理論を構築する方法を「トップダウンアプローチ」と呼んでいる。

自身では、新理論の展開に関して、ボトムアップアプローチをとっていると言っている。
晩年のアインシュタインの統一場理論の研究の態度は、トップダウンアプローチだったことを暗に批判している。
しかし、余剰次元のアイデアは、トップダウンアプローチから生まれた超ひも理論から得ているとも言っている。
ボトムアップアプローチは、現象論的だと言っているところもあり、バランス感覚はある研究者だと思う。


1.現在の物理学の問題

物質の成り立ちを説明する量子力学は標準モデルで物質の成り立ちを記述している。
量子力学は一番成功した学問だと言われている。特に量子電磁理論(QED)は誤差1/10億の正確さで、実験結果予測できる。
量子力学を道具として使用するには、何の問題もない。しかし、学問としては謎が残っている。
この謎に挑戦している一人が、リサ・ランドールである。

標準モデルの謎とは?

1)階層性の問題

ヒッグス粒子(ウィークボソン)の質量がなぜ小さいか?
  大統一理論(GUT)では、ヒッグス粒子は極めて重いはず。(GUTスケール)
  ウィークスケールエネルギー:250GeV   →電弱対称性が破れるエネルギー
  プランクスケールエネルギー:10**19GeV →重力相互作用を規定するエネルギー

2)4つの力が統一できない

3)重力が弱い
  重力は他の力に比べ、10**16程度弱い、しかし、この大きさの差を説明できない。

これらは結局、一般相対性理論と量子力学が矛盾しており、世界をミクロ~マクロまで記述できる理論を人類は持っていないという事である。
現代物理学は、標準モデルを誤魔化す必要に迫られている。


2.謎への挑戦

現状の問題の解決のため、幾つかの仮説がある。

・大統一理論
 強い相互作用、弱い相互作用、電磁相互作用を統一する理論。

・超対称性大統一理論
 階層問題を解決する理論。
 3つの力(強い相互作用、弱い相互作用、電磁相互作用)が高エネルギーで、1つの力に統一される。
 統一されるエネルギースケールは、10**16GeV。
 標準モデルでは、この統一が完全には一致しないが、この理論ではより精度が高く一致する。
 ボソンとフェルミオンが超対称変換で入れ替わる。
 現宇宙は超対称性は破れていおり、粒子とスーパーパートナー粒子の質量は同じではない。
 スーパーパートナー粒子の質量は数百GeV以下なので、LHCの数千GeVのエネルギー範囲で検証できる可能性がある。

・超ひも理論、M理論
現状の量子力学では、素粒子を点として扱っている。数学で点とは大きさを持たない位置情報である。
 しかし、現在の物理学では、大きさを持たない物質は扱えない。
 そこで、素粒子は、ひもで構成されており、ひもには最小有限の大きさがあるので、上記の問題が発生しない。
 超ひも理論には、以下の5種類があり、超対称性を持つ理論である。
  -SO(32)I型
  -IIA型
  -IIB型
  -SO(32)ヘテロティック
  -E8×E8ヘテロティック

 5つの理論は双対性を持ち同じ理論となる。
 M理論は、上記の5つの超ひも理論を統合する11次元(空間次元が10個、時間次元が1個)の理論である。
 
 
・ブレーン宇宙
 ブレーン(物体)とはゼロでない荷量と有限の張力があり、力を通じて相互作用できるもの。
 Dブレーンは、ひも理論での開いたひもの端点がそのブレーンに存在するもの。
 ブレーンとは、我々の4次元空間を指す、宇宙には、我々が感知できない余剰次元が存在し、その高次元の中に、我々の4次元空間が存在する。
 4次元空間は高次元空間より次元が低いので、抽象的にブレーン(膜)と呼ぶ。
 高次元空間は抽象的にバルク(プレーンに区切られた高次元空間)と呼ぶ。


3.ブレーン ワールドの解

 ブレーンワールドには、幾つかの仮説がある。

・HWブレーンワールド 
 
 2枚のブレーンから構成される9次元の理論。
 ブレーン上の力はヘテロひも理論の力と同じ。
 大統一理論まで記述できる。
 ブレーンとバルクはエネルギーを帯びることがでる。

・ADDモデル

 余剰次元の大きさを1mm以下と予測。
 現在の実験結果からは、0.1mm以下である。
 余剰次元が大きいので重力が弱いことを説明できる。
 LHCで余剰次元存在の証拠として、KK粒子が見つかる可能性がある。
 LHCでブラックホールの生成が確認できる可能性がある。
 ランドールの意見:余剰次元が、0.1mmという大きさは合理的に説明できない理論。

・RS1モデル

 最初のランドールのブレーン宇宙理論。
 以下の2つのブレーンが存在する5次元宇宙理論。
 -標準モデルの粒子が存在するブレーン(ウィークブレーン)
 -対称性が破れたブレーン(重力ブレーン)。
 
 バルク粒子は重力子(グラビトン)であり、標準モデル粒子と対称性破れブレーン粒子と相互作用する。
 重力はブレーン内に閉じ込められない。
 重力子(グラビトン)はスーパーパートナーの質量を生み出すメッセンジャー粒子である。
 余剰次元が小さく(10**-31cm)ても、物理現象に目に見える影響がある。
 LHCで検証可能なエネルギー範囲の理論。
 余剰次元の証拠として、一定間隔の質量を持つ、カルツア-クライン粒子(KK粒子)-高次元粒子-が検出される可能性がある。

 ブレーン上のエネルギーとバルクエネルギーは時空を湾曲させる。
 時空はアインシュタインの重力方程式から、負の曲率のド・ジッター空間(Ads)となる。
 5次元の時空計量は以下の様に記述される。

Y_2

 l:曲率半径(反ド・ジッター空間の曲がり具合)
 y:余剰次元方向距離 
 y=0、d にブレーンが存在する。

 重力子の存在確率は時空の各点で異なり、5次元(余剰次元)方向の関数となる。
 5次元の関数は指数関数 exp(-2|y|/l)となるため、ウィークブレーン上ではエネルギーと運動量は縮み、距離と時間は広がる。
 重力ブレーンとウィークブレーンの比は、10**16 :1 となる。
 プラインク質量Mplは、1TeV程度となる。
 このため、階層性の問題は解決できる。
 この指数をワープ係数(WARP)と呼んでいる。
 
 歪曲時空は、バルク内に4つの力が作用できる。バルク内のゲージボソンは高エネルギーを持てる。
 このため、ヒッグス粒子がウィークブレーン、クォーク、レプトン、ゲージボソンがバルクに存在でき、ウィークスケールが守られ、かつ、GUTスケールで統一される。

 KK粒子は余剰次元で2スピン(1TeV)の運動量を持つ。
 このため、LHCでKK粒子が検出可能である。また、5次元ブラックホールも検出可能である。


・RS2モデル

 2番目のランドールのブレーン宇宙理論。
 ブレーンが1枚の5次元宇宙。
 余剰次元は無限であるが、重力子は、ブレーンの近傍に密集した局所化された重力。
 
 空間の異なる領域は異なる次元を持つ可能性があり、我々の宇宙は、高次元空間に孤立したポケットに住んでいるかも。
 重力子が局所集中した領域でしか4次元相互作用を伝えない。


4.ブレーンワールドの今後

 ブレーンワールド理論で、現在の宇宙論的観測結果を説明しなければならない。
 世界中の物理学者が研究をしている(ようだ)。

 ・地平線問題(インフレーション宇宙)
 ・平坦性

いちばんエキサイティングな事は、この理論が、もしかしたら今年にもLHCの実験で検証できるかもしれないことだ。


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